「すまいは権利」なのに、住みたい人が住めないまちになっていないか?(2025年第3回定例会一般質問より)
- 2024年度決算について
- 居住支援について
- 生きづらさを抱える方々への支援について
- 困難な環境にある女性支援について
- 居場所づくりとコミュニティ創出について
- 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典参加と戦後80年について
一般質問しました。持ち時間は40 分です。長いですが、予定質問原稿と答弁の前文を以下に貼り付けておきます。なお、質問原稿は予定のもので、実際には時間の都合で、質問の際は読み上げなかった部分もあります)

質問)
豊島区の人口は現在29万5千人規模ですが、令和6年には死亡数が出生数を865人上回り、自然減が続いています。増加を支えているのは、大規模マンション開発による住宅供給や外国人住民の増加です。令和7年1月時点で外国人人口は36,360人、総人口の12.3%を占め、その多くは留学生や若年層です。
一方で、単身世帯、とりわけ一人暮らし高齢者の割合が高いのも特徴です。(65歳以上35.6%,75歳以上38.1%)出生率の低迷が課題として上がることもありますが、世帯構成の変化への対応は急務です。若者からミドル世代(中高年)、高齢者まで、単身世帯の割合は高まっています。また、ひとり親世帯を含む子育て世帯については「住宅費の高さ」や「再開発での住みづらさ」から区外転出を余儀なくされている声を聞いており、家賃補助を含む定住促進策が必要でしょう。外国籍住民の割合が12%を超えている本区は、多様性の象徴でありこれまでも多文化共生を政策の柱に据えてきており、多文化共生都市として国内外に発信もしてきていますが、日本語の壁による行政サービスへのアクセス困難や、差別やヘイトが生まれないよう、行政側の発信も非常に重要になります。
「家族」の在り方が多様化し、従来型の家族や地域で支え合う関係が変化した中、孤立を防ぎ「誰もが安心して暮らせる地域」をどうつくるか、は、自治体が推進力をもってすすめるべき課題であり「まちづくり」の優先課題であると考えます。よって、サブタイトルに、〜多様な生き方を許容できる豊島区になっているか?〜をつけ、この観点から、質問をします。
1)2024年度決算について
コロナ禍を経て、人々の生活や経済が活況をとりもどしたように見えますが、今、社会経済全体が大きな不安定さの中にあります。ウクライナ戦争や中東の緊張、円安の進行などに加え、米国のいわゆる“トランプ関税”など、不確実性の要素が重なり、これらは、日本経済に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
さて、豊島区の令和6年度決算を見ますと、歳入は1,545億円(前年度比4.9%増)、歳出は1,497億円(同3.9%増)で、いずれも過去2番目の規模となりました。形式収支は約48億円の黒字、実質収支も27億円と、前年度より増加しています。義務的経費では扶助費が445億円とわずかに減少した一方、人件費は児童相談所の設置や職員増により258億円、13.9%の増加となりました。投資的経費も再開発やインフラ整備で189億円と大幅に増えています。
歳入面では、特別区税が364億円とやや減少したものの、国庫支出金や再開発関連の補助金が増え、全体としては増収となりました。ふるさと納税による流出額は27億円と、区財政に大きな影響を与えています。また、経常収支比率は81.7%に上昇しました。
さらに都区財政調整については、令和6年度の普通交付金総額が1兆1,258億円(前年度比2.7%増)となる中、豊島区への算定額は約332億円で前年度比4.0%減となりました。現在の好調な税収の背景には、企業業績の改善による法人税収の増加が大きく寄与しているので、今後の経済動向にも注意が必要です。
決算特別委員会では、わが会派からは川瀬議員がメンバーであり、かん別の具体的な質疑については、そちらで行いますので、ここでは、大きな視点からの質問をします。
・今般の社会経済状況――物価高、国際情勢の不安定さは、区民生活へどう影響を与えたか? 区政運営にはどう反映されたのか? それらの認識についてお伺いします。
- 都区財政調整制度は、都と特別区間の事務配分や税収の偏在を調整する仕組みであるが、都区財政調整交付金は、法人の業績に大きな影響を受けるものであるが、特別区と東京都との交渉もあり、金額が決まるのが期の途中であり、見込み金額とは差異の出る場合もある。例えば、令和6年度の普通交付金の予算額は367億円のところ、決算額は12億円減の355億円。令和7年度の予算額は351億円のところ、当初算定時点で21億円増の372億円と、年度によって増減があります。これらの増減は、財政運営にどのような影響を与えるのか? 与えない、とするのであれば、その理由についてお示しください。
2)「well-being」(あらゆる人にとって生きやすさ、幸せな状態)なまちづくりを目指すには?
・居住支援について
「well-being」とは、誰もが生きやすく、安心して幸せに暮らせる状態を指します。その基盤には「住まい」があります。住まいは権利であり、住まいの安定があってこそ、仕事や地域の活動ができ、安心安全で健康な毎日が送れる、ということに、誰も異論はないはずです。
しかし、このところよく聞こえてくる区民からの声の一つに、豊島区に住み続けたいが家賃が高くて引っ越しをせざるを得なくなった。子どもが大きくなってきたので、賃貸から持ち家をと考えても、サラリーマンには高くて手が出ない、というものです。実際、この夏、 選挙の応援で練馬区に行くことがしばしばありましたが、その際、豊島区から練馬区などに転居した若いファミリー層の方々に何組も出会い、そうした生の声を聞きました。
家賃高騰の理由として、一般的な物価高の影響もありますが、都心部のマンション価格の高騰は特に深刻です。不動産経済研究所によると、2024年1〜6月の東京23区の新築マンション平均価格は1億3,064万円で、前年同期から20%以上の上昇となっています。
具体的な例としては、南池袋2丁目の再開発事業を伴う高層マンション「グランドシティタワー池袋」の販売価格が1億6500万円(55平米)~3億2800万円(88平米)となっており、 その他の平均価格も新築中規模マンションでは、2LDKで1億円超、3LDKでは1億5,000万円近い価格がつけられており、一般的な勤労世帯には到底手が届きません。
こうした「住みたい人が住めない」問題は、都心部において、すでに顕在化しています。NHKが中央区の「晴海フラッグ」の居住実態を調査したところ、2690戸の分譲マンションの3割以上に居住実態が確認できないと番組で衝撃を持って伝えられました。元々は、補助金が投入されたオリンピック村の開発事業でしたが、投機マネーのターゲットとなり、入居開始直後から居住実態がない物件が数多く確認され、その後の高値転売や長期の空室につながったと見られています。夜に周辺を歩くと、あかりの灯る住居は少なく、新しいのにゴーストタウンのような街並みとなっている、と聞いています。
こうした実態もあり、東京都は今年3月の都議会において、再開発事業で都が建設に関わったマンションが販売される際、投資目的の購入を防ぐ措置を講じるよう事業者に要請する方針を明らかにしています。都によると、要請対象になるのは、都市再開発法に基づく都の市街地再開発事業で建設されるマンションであり、都に代わって整備や分譲を行う事業者に対し、1名義あたりの申し込みを2戸までに制限するなどの対応を求めるようです。(現状では、泉岳寺駅地区(港区、約1・3ヘクタール)に2031年度完成予定の30階建て高層マンションで要請する見込みなど)
またつい先日、千代田区では、マンション購入後5年間の転売禁止条項や同一名義による複数購入の禁止を不動産事業者に要請しました。背景には、居住実態調査で約7割の物件に居住が確認されなかったという衝撃的な結果があり、千代田区長は「空室が多いままだと、災害時の共助やコミュニティ維持への深刻な影響がある」と、新聞社のインタビューで懸念を示していました。
首都圏だけでなく、地方都市においても同様の懸念が広がっており、神戸市の審議会では、居住実態のないマンションや空き家の増加に対応するため、「空室税」導入の検討の声があったとの報道があり注目されました。投機目的の所有を抑制し、実際に居住する人のために住宅を活用させる狙いがあり、研究や制度設計が進められていると報じられています。
本区においても、こうした事例を踏まえ、まずは実態把握として登記簿調査などにより「実際に住まわれているのかどうか」を確認すべきではないか、と考えます。
そこで質問します。
前回の予算委員会において、他会派の議員よりそうした指摘もあり、区は調査を行う方向性を示した答弁だったと認識しておりましたが、その後、どこまでそうした調査や実態把握が進んでいるのか? お聞きします。
また、本区においては、再開発を含む大型マンションは、現在建設中や計画段階のものも多いと見受けられますが、遅きに失することのないよう、今のうちから手を打つためにも、他の自治体で行われている、家賃の高騰につながるような投機の抑制や居住実態のない空室が増えないような、何かしらの仕組みやルール、場合によっては、空室税の導入などを検討するべきではないでしょうか?「住まい」が投機のための格好の対象になっている今の状態は、「住まいは権利」の観点から、民間事業とはいえ、そういう事態を黙認、放置で良いとは思えません。
区長の見解を求めます。
さて、本区が行っている具体的な居住支援施策より、お聞きします。
今年より要件が緩和され、より必要な方に届くための制度改正となった、「新子育てファミリー世帯家賃助成制度」についてです。子育てファミリー世帯に対して、より良質な賃貸住宅への誘導を図り、居住面積の水準の向上のために、家賃を補助するというもので、これまでも活用実績の高い制度でしたが、今年度より、国籍要件も撤廃をし、家賃補助の上限も1世帯3万円となりました。そこでお聞きします。
・「新子育てファミリー世帯家賃助成制度」は、要件が緩和されてからの申し込み件数は、どのように推移していますか?また、ホームページを見たところ、今年度より申し込み期間を区切っていおり、現段階では申し込みフォームも閉じた状態が続いています。せっかくの良い施策が、これでは必要なファミリー世帯に届かないのではないか? と心配しますが、それについての対応策をお示しください。
・また今年度より親との同居、近居をする、「多世代近居・同居支援の制度」も新しく始まりました。こちらは、対象者が「豊島区内に住む親と近居・同居するために引越しをする子育て世帯」となっており、定住促進を期待するものだと聞いています。この制度は、引越しの費用やリフォーム費用の助成もあり、こちらの制度と「新子育てファミリー世帯家賃助成制度」の両方を使うことによって、ファミリー世帯へのより手厚い居住支援となり、区内への定住が進むことを期待します。
しかし一方で、例えば、ひとり親の子育て世帯の方が、子育てのためのより良い環境の住居への引っ越しを区内でしたいと思っても、「新子育てファミリー世帯家賃助成制度」には、引っ越し費用への助成がないため、転居できない場合が少なくありません。
(例えば先日、ある区民からこのような相談を受けました。中学生の子育て中の母親。専門職で働いているが、非正規職員なので給与は手取りで20万円台。離婚した夫からの養育費(8万円)が途絶えがちで、家賃(13万円)の支払いが大変になってきている。子どもも大きくなってきたので、区内での引っ越しを考えているが、ひとり親が受けることのできる、良い支援があれば教えてもらいたい、というものでした。)
「新子育てファミリー世帯家賃助成制度」「多世代近居・同居支援の制度」は、いずれも、本区独自の家賃助成制度、居住支援として、引き続き拡充し大事にしていくものである、と認識しています。多様な世帯の「子育てファミリー」の声を聞き、より必要な方に寄り添った形での支援をお願いしたいと考えますが、区長の見解をお聞きします。
次に空き家活用事業についてお聞きします。
本区における空き家の数や割合は、29810件、13.9%(令和5年住宅・土地統計調査より)となっており、23区の中でも1位(賃貸以外の空き家率は20位)となっており、空き家自体が「社会課題」となる中、公設の住まいを新たにつくるよりも、現状ある「空き家」や民間の賃貸物件を活用して、居住支援を充実させるというのが、本区の基本的な方針であると、これまでの答弁から確認をしているところです。
「空き家活用」のためのセミナーも積極的に展開をし、また区としては、空き家のオーナーと活用したい団体とのマッチングを丁寧に行っている、とのことですが、補助金を活用した社会貢献型の居住スペースやシェアハウスや福祉住宅について、どのような事業や実績があるのかについて、内容とその数(応募数やマッチング成立数など)お示しください。
こうした取り組みについては、実績や先進事例、またニーズをまとめて出すことによって、新たな活用が呼び込めるのではと期待します。手軽に誰でもアクセスできるホームページで、これらの事例についての情報、概要があれば、と考えますが、いかがでしょうか?
これまでの本区の実績からは、空き家活用事業は、多様なニーズを読み取り、区がマッチングのみならず、場合によっては新しいスキームの提案をするなど、コンサル的な役割も果たしているのだと理解しております。
家族の在り方が多様化し、若者から高齢者まで単身世帯が増加している、といった現状あるニーズに対して、良質な住居提供、福祉住宅の提供、居場所やコミュニティ、地域経済の活性化につながる店舗提供などを、空き家事業で今後どのように、カバーしていくのか? 今後の空き家活用事業の果たす役割や方向性や目標値について、お示しください。
⚫️生きづらさを抱える方々への支援について
先日、次のような相談を受けました。
母親から虐待を受けて育ち、ながらく精神疾患を患っていたが、一人暮らしをはじめることで徐々に回復していった。仕事を自分で見つけて、徐々に働く時間も増やしていっていたが、残業が多いのと残業代の未払いなどが続き、疲れがたまっていた。くわえて、障害者年金が打ち切られたことで、家賃が払えなくなるとの心配が大きくなり、生活がいっきに不安定になった。
精神障害については、見えにくいという特徴もあり、一般就労をしている方も少なくないですが、職場でいじめを受けたり、ブラックな働き方を強いられたり、ということがあるようです。また、障害者年金の打ち切りについても、書類の申請方法が複雑で、そのやり方によって、年金の支給が左右されるという例もあると聞いて、当事者が一人でそれを担うのは、かなりハードルが高いのではと感じました。
個々の事例の課題については、さまざま個別対応がまた求められるところですが、わたしは相談を受けながら、大きな課題として、障害をお持ちの方の就労支援、特に精神障害について、仕事を求める方々の数も急増していることから、公の果たす役割があるのではないか、と考えます。
なお、先ほどの相談者さんの訴えでは、区の窓口に相談に行ったものの、年金のことは管轄が違うと言われ、年金事務所に電話をした際には、非常に冷たい対応をされ、社会福祉協議会や福祉事務所にも相談したものの、寄り添った対応がなされず、落胆されていました。
現在、東京都全体で精神障害者手帳保持者は約41万人、豊島区でも約6千人。この数年保持者の人数は上がり続けています。潜在的にはさらに多いと推計されます。
さて、障害者雇用促進法に基づき、障害者の雇用率の設定がなされています。令和5年度からの障害者の法定雇用率は2.7%ですが、雇入れにかかる計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては、2.3%で据え置き、令和6年から2.5%、令和8年度(来年7月)からは2.7%と段階的に引き上げることになっています。
一方で、国および地方公共団体については、3.0%(教育委員会は2.9%)とする、となっています。段階的な引き上げについては民間事業主と同様としています。
新聞報道によると、厚労省の最新集計によると、民間企業の実雇用率は2.4%であり、障害者雇用に詳しい有識者のコメントには、「急速な採用活性化で雇用の質やミスマッチに懸念が残る」「障害の状況や仕事が適しているか本人と話し合い、常に調整していくことが必要」とあります。
私が「女性の相談会」で受けた相談や「女性ユニオン」が受けた労働相談においても、精神障害など困難を抱えた方のご相談でも、労働に関する悩みも多いことから、「仕事をしたい意欲はあるが、適切な仕事や職場の環境に出会っていない」ことが、しばしばあります。
一方で障害をお持ちの方にとって国や自治体への就職は、落ち着いて仕事ができる環境も整い、待遇も条例で定められており「ブラック」ではないことから、希望者も多い人気の職場である、とも聞いています。
そこで質問します。本区における障害者の雇用率はどのようになっていますか?正規職員、会計年度任用職員、それぞれ内訳や職種についてもお示しください。
本区の雇用率は、現在2、4%で、2.8%にはわずかに到達していない状態ですが、この理由についてもお答えください?
会計年度任用職員については、「オフィスサポートセンター」を立ち上げ、オフィスサポーターの方が現在は12名、支援員が4名、人事課で働いているとのことですが、その働き方や仕事内容についてはどのようなものでしょうか?
本区においては、法定雇用率をまず、満たすことが重要であると考えますが、民間事業者へ指導する立場にある公共の役目の一つとして、障害者の方にとっての働きやすい職場として、情報提供なども積極的に行い、民間事業所への良い影響を波及させてもらいたい、と考えるがいかがでしょうか? (例えば、障害者週間のポスターは、良かったが、駅など目立つところにも貼ってもらいたいと思いました)
また、本区においては、障害者の方が一般の職場や障害者雇用で仕事をしたいと考えた時に、ハローワークを案内することになっているようですが、それ以外で、本区においては、障害者の方々が生活や就労についての相談をしたいと考えた時、どのような相談窓口を持っていますか?
区としても障害者雇用についての(法定雇用率を満たしているかどうかも含め)、データを持ち、障害者雇用の動向にも敏感であり、区内事業者の場合は、顕彰や評価、時には指導することも必要ではないかと考えるが、いかがでしょうか?
本区においては、精神障害者の生活・就労の実態をどのように把握しているか。就労を希望している方々相談窓口の一本化やコーディネーター強化を進める考えはあるか。作業所支援、公共調達を通じた障害者の就労機会拡大をどう進めるのか。さらに障害者年金の突然停止され困惑をしている当事者への対応支援などについて、区の見解をお示しください。
ちなみに東京都は、全国初の「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例」を策定し、取り組んでいます。1970年代にイタリアで始まった「ソーシャルファーム」は、一般的な企業と同様に自律的な経営を行いながら、 就労に困難を抱える方が、必要なサポートを受け、他の従業員と共に働いている社会的企業のことです。海外においては、「ソーシャルファーム」と 呼ばれる社会的企業が多数存在しており、ヨーロッパ 全体で約 10,000社、また韓国でも約3,000 社が存在し主に障害のある方など、就労に困難を抱える方が、他の従業員と一緒に仕事をする場として発展しているとのことです。多様な生き方を許容するまちづくりの、一つの方向性として期待しているところです。
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・困難な環境にある女性支援について
困難を抱えている女性は、生活困窮・労働問題・家庭不和・DV・健康不安などが複雑に絡み合い、複数の課題が多くあります。なかでも「住まいと仕事」の二つの課題が大きく、逆に言えば、ここが安定することで、自立した生活へと向かうことができる、のではないか、と思われます。
第一次豊島区困難女性支援法に基づく「第一次豊島区困難支援基本計画」にも、施策の方向の1に「健康・生活・就労・居住支援の充実」とあり、取り組みとしては、「安心してその人らしく暮らすための第一歩として重要な健康支援をはじめ、生活に関する支援、就労に関する支援、住まいに関する支援などの多様な支援を行います」とし、「生活・就労に関する支援」には、「関係期間と連携し、相談の場を整え、安定的な生活を送ることができる力を身につけるための支援を行います」とあります。
先日、「すずらんスマイルプロジェクト」の協力団体でもある、「特定非営利法人ぱっぷす」の夜のアウトリーチに参加してきました。新宿歌舞伎町や大久保公園界隈における、若年女性への声かけです。ちなみにこれは、東京都若年被害女性等支援事業の委託事業の一つです。2年ぶりとなるアウトチーチ参加でしたが、前回との違いで声かけをする側の若い女性たちは、かつては皆、性搾取される側の当事者として、非常に困難な状況にあった女性たちであったということです。親との不仲や親からの虐待、また家庭の貧困といったことから、家を飛び出し、ネットやSNSの情報や検索をし、不安や生きづらさを紛らわすために、繁華街に来た、という子たちでした。
かつて繁華街を拠点にさまよっていた彼女たちは今、ハームリダクションの観点、すなわち依存をやめさせるのではなく、ゆっくりと関係性を構築していきながら、今の生きづらさの解消と依存の軽減を求めていくアプローチの担い手として、夜のアウトチーチの地道な活動の担い手となっています。その過程において、「ぱっぷす」のような支援団体とつながり、信頼できる大人たちとの関係の中で、自分自身を見つめ直すきっかけを持ち、性的な搾取にあっていたことに気がつき、当事者だった経験を生かし、支援する側のまわるようになった、ということです。
ある女性からは、長らく歌舞伎町で性搾取され続け、絶望的な状態になり、路上で倒れている時に、豊島区の複数の民間支援団体とつながり、今は支援する側にまわり、新しい人生を歩み初めている、という話も聞かせてもらいました。
そんな彼女たちの訴えとしては、「仕事につきたい。でも自分がどんな仕事ができるのかが、わからずに不安だ」「美容の仕事がしたい。そのための資格をとる専門学校に行きたいが、学費が用意できない」「一度あきらめた大学に行きたいが、奨学金をどうやって獲得すればいいのか。」「夜の仕事ではない仕事をしたいが、自分にどんな仕事が向いているのか、わからない」など。「若い女性向けの職業体験、“大人のキッザニア”が欲しい・・・」という具体的な要望を話す方もいました。
いずれの女性たちも「仕事をして自立をしたい。誰からも搾取されない生活をしたい」という、前向きな気持ちを強くもっており、アウトリーチで今は支援する側にいるにもかかわらず、就労や奨学金を得るための具体的な情報や支援する機関には出会えていないという、実態を目の当たりにしたようでした。いわゆる一般的な女性のための起業や就労支援とはまた違う形での、困難な状況にあった「若年女性」への就労支援の必要性があるのではとも感じました。
そこで質問をします。
・今年発表となった「第一次豊島区困難支援基本計画」にある「生活・就労に関する支援」:「関係期間と連携し、相談の場を整え、安定的な生活を送ることができる力を身につけるための支援を行います」についての、現在の進捗と今後の予定や取り組みはどのようになっているでしょうか?
・若年女性の支援のためのプロジェクト「すずらんスマイルプロジェクト」では、民間団体さんと豊島区が、定期的に「すずらん・ネット会議」を持っていますが、具体的にどのような取り組みをされ、また、今後の目指すところなどもお示しください。
・居場所づくりとコミュニティ創出について
この間、全国にあるさまざまな“居場所”の視察をしてまいりました。いずれも、空き家や使わなくなった社員寮などを活用しており、あらたな拠点ができたことで、支援場所としての役割や居場所だけでなく、地域コミュニティの拠点にもなっている、ということがよくわかる事例でした。
例えば・・・、
国立市にある2015年に開設された「地域に開かれた女性支援の居場所 Jikka」は、単に住まいを提供するのではなく、地域に根差した交流や支え合いを組み込み、孤立を防ぐ仕組みを持っています。この実践を踏まえて国立市は2019年度に「女性パーソナル事業」を創設しました。短期宿泊や中長期の自立支援を、行政と民間団体が協働して実施しています。女性支援を単なる福祉政策としてではなく、ジェンダーの課題として政策と地域づくりの中心に置いていることは、大きな特徴です。「支援をまちづくりの根幹に据える」点で大いに参考になると考えます。
神戸市内に設置されている「六甲ウィメンズハウス」は、DV被害や家庭内の困難を抱える女性たちが安心して一時的に暮らせるシェルター機能を持ち、さらに地域に開かれた形で運営されています。ここでは、当事者が地域コミュニティに孤立せず関われるよう、運営者や地域住民が積極的に関わる仕組みが取られており、支援と居場所づくりを両立させています。
本区にある「コレクティブハウス フラット西巣鴨」は、単なる共同住宅ではなく、多世代が交流し、子育て世代、高齢者、単身者が互いに支え合う住まいの形を実現しています。居住者同士が日常的に食事や家事をシェアし、孤立を防ぐ仕組みは、少子高齢社会における新しい住まい方のモデルといえるでしょう。
本区の新事業、「まちづくりエリアにおける空き家活用による若者の居場所創出事業」は、区内のUR都市機構所有の空き家・空き地を若者支援のために活用する協定を区とURとで結び、また区は区内で活動をしている若者支援事業を展開しているNPO法人に使用転借契約を結び、NPO法人はそこで事業を展開するという、これまでになかった新しいスキームで、すでに期待と注目を集めています。
NPO法人は、中古住宅を活用しながら若者の居場所だけでなく、そこで発生する様々な仕事、例えば庭の草むしりやカフェ運営補助を、若者にやってもらうことで、ゆるやかな「就労支援」にもつながっているとのことで、若者たちの自立を後押しする、非常に重要な取り組みだと評価します。
加えて、再開発をただ待つだけのエリアではなく、NPOや若者が来ることで、街の風景も変わり、地域の人にもワクワクしてもらえるような、そんな新たなコミュニティの活性化にもつながる可能性があるのではないか、と期待をしています。
そこで質問をします。
・本区としては、今後の予定やさらなる展開をどのように考えていますか?
・ここで培ったノウハウを、他のエリアに展開することも考えているのか?
ご答弁願います。
居場所づくりとコミュニティ創出については、社会の多様化がすすみ、地域の関係性が以前とは違って薄れていく中において、新しい方向性もまた模索しなくてはなりません。従来型の町会を中心とした地域コミュニティも大事ですが、地域の方々は、ほぼボランティアベースで行なってきている、そこに今後の展開の難しさがあるように思っています。もちろん自分たちの街のことは、自分たちで行うというのは、自治の基本であり、そこは自らが主体的に行うべきことです。しかし行政サービスの代わりを担うことについては、私はボランティアでは限界があるのでは、と地域の声を聞くにつけ、思うところです。
世田谷区の事業「おでかけひろば」は、子育て中の親子が気軽に立ち寄って交流ができ、子育て相談や子育て情報の提供を通して、子育てに対する不安の解消や孤立や孤独、負担感の軽減、地域の子育て支援機能の充実を図る目的で、空き家や遊休施設を活用し、「どこに住んでいても15分以内で子連れで行くことができる」を目指し、令和6年11月現在は72ヶ所(目標80ヶ所)を創出しています。
第1号の「おでかけひろば」は、2017年に「空き家等地域貢献活用」で誕生した「FUKU*fuku(ふくふく)」の代表の橋本陽子さんによると、「おでかけひろば」は、子育て世代の相談にのるだけでなく、運営を担っていたのは、主に地域の元お母さんたちだったということでした。 事業費については区が補助金を1事業あたり基本事業で年間約600万〜860万を補助。橋本さんが「私たちは、決してボランティアではない。お金をいただいていますから責任もあります」と言い切っていたのが、印象的でした。また地域資源の活用(空き家や人材)と、仕事創出にもなっているのです。
本区にも、地域の人が自主的に地域資源を使っての居場所づくりや自主グループ活動で地域貢献を活発にやっている例は多数あり、私も頭が下がる思いでみています。しかしながら、あくまでも「ボランティアベース」、地域の人の「善意と持ち出し」だけでは、今後の持続が難しいのではと、思うことも少なくありませんし、実際、「持ち出しばかりでやりきれない・・・」との悩みを聞くこともあります。
・そこでお聞きします。本区においても、「おでかけひろば」のような、地域の人たちが、ボランティアではなく働けて、地域コミュニティを創出できる仕組みについても、研究、検討をしてもらいたいと考えますがいかがでしょうか? こどものための居場所だけでなく、さまざまな年代やさまざまな人、を包摂するそんな「居場所」と「コミュニティ」の創設が、持続可能性のある形で、今後、ますます求められます。「well-being」(あらゆる人にとって生きやすさ、幸せな状態)なまちづくりのためにも、前向きなご検討を願います。
3)長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典参加と戦後80年について
私は、8月9日に長崎市で行われた「原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」に議会派遣の一員として参加して参りました。前日には、長崎市議会議長、副議長との懇談の機会も設定いただきました。平和ガイドによる被曝地案内、資料館を訪れ、改めて私自身も、どんな理由があろうとも、戦争は始めてはならないし、一度始めたらやめることができなく、多くの市民、特に弱者が犠牲になるのが戦争です。そうした争いの火種となる、分断や差別や排斥を生んではならない。政治家の決断や言動というものは、極めて重いとの思いにかられました。
区長も平和記念式典に、参列をし、またその後は、核兵器廃絶に向けた連帯を深めようと世界各地のおよそ8500の都市が加盟する団体で、4年に1度、長崎市と広島市で交互に総会が開かれている、「平和首長会議」へも出席されたと伺っています。ニュース報道では、鈴木長崎市長が、「世界で核兵器使用の脅威が高まる中、われわれ都市のリーダーが果たす役割はますます重要なものになっている」と述べました。私もそのように強く思います。
また本区においては、「豊島区戦後80年平和展・平和スタンプラリー」を開催し、8月6日から9月15日まで、「区民の皆さまと平和の大切さを考える機会に〜」との、事業を開催しました。センタースクエアで行われた、語り部のお話を熱心に聞く区長の姿がありましたが、若い世代や子どもたちにとっても、貴重な機会だったと思います。
世界を見渡すと、混沌と混乱の時代にあることは紛れもないことですが、市民の暮らしと生活を守る、自治体のリーダーの言葉は何より重く、大きなアナウンスになります。
そこで質問をします。
- 区長は、今回の長崎平和式典、および、平和首長会議に参加してどのような思いを持たれたのか?
· 戦後80年。戦争体験者が少なくなり、戦争を知っているリーダー、政治家も少なくなりました。区長もまた、戦争を知らない世代のリーダーですが、平和の尊さや、いかなる戦争もだめなんだ、と言うことを、若い世代にどのような言葉で継承していこうと考えているのか? 政治家としての言葉をお聞きしたいと思います。ご答弁願います。
(以上)
- 区長答弁
ただいまの、塚田ひさこ議員のご質問にお答えいたします。私からは、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典参加と、戦後80年に対するご質問のうち、まず、長崎平和祈念式典、平和首長会議への参加についてです。
本年8月9日に参列した平和式典では、原爆により犠牲となられた方々に、深く哀悼の意を表するとともに、恒久平和の実現に向けた思いを新たにいたしました。式典では、被爆地としての切実な訴えが発せられ、多くの参列者の祈りとともに、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないという思いを、会場及び全国の皆様と共有をいたしました。
平和首長会議は、被爆80周年記念総会として開催され、「核兵器のない世界を目指して~地球市民として描く平和な未来~」をテーマに、国際社会に平和を訴える目的で行われました。
会議には、15か国139都市から228名が参加し、そのうち78名が首長として出席するなど、国際的な広がりを持つ意義深いものでありました。
今年の会議では、「ナガサキアピール」が採択され、子どもや若者の視点から未来を担う次の世代へ戦争体験を継承していく平和教育を意欲的に推進すること、加盟都市間の連携を強化し、地域の特性を活かした平和活動を実践することなどが確認されました。本区においても、こうした国際ネットワークを活かし、平和の行動の輪を広げる必要性を実感いたしました。
次に、若い世代への平和の尊さの継承についてです。
戦後80年が経過し、年月の経過とともに、人々の間で戦争への関心が薄れつつあり、また、戦争体験者の高齢化が進む中、当時の状況を直接語り継ぐことが、次第に困難になっております。一方で、今なお、世界各地において戦争や紛争が起こり、多くの人々が戦禍に苦しんでいる、厳しい現実があります。
今日、私たちは、極めて残念ながら、「もはや戦争は昔のこと」、そう言える状況、そうした世界ではないんだということを認識し、今を生きる私たち一人ひとりが、平和は決して当たり前ではなく、私たち自身が、強い意志をもって守り、守り継いでいかなければならない。そのことを、未来を担う若い世代に伝えていきたいと思っています。
こうした思いのもと、私は、本年策定した「基本構想・基本計画」の理念「誰もがいつでも主役」に、「平和の尊重」を明確に位置づけました。これは、区政のあらゆる場面において、平和の理念を根づかせ、広く区民の皆様とともに、改めて平和の意義を考えていきたいという、区長としての決意を込めたものです。
そして何より、平和の大切さを子どもや若い世代にしっかりと引き継いでいくとの思いを込め、今年の平和事業は、区民ひろばや図書館といった身近な施設での取組みに加え、地域団体や小学生との連携により、平和ミニコンサートや絵本の読み聞かせなど、これまでにない多様な事業を展開しました。こうした取組みを通じて、戦争や原爆の記憶に触れ、子どもから高齢者まで、あらゆる世代が平和の尊さを学び合い、その想いを未来へと確実に引き継いで行けるよう、努めてまいります。
私からの答弁は、以上でございます。
- 政策経営部長答弁
私からは、2024年度決算に対するご質問のうち、まず、物価高や国際情勢の不安定さが区民生活に与えた影響と区政運営への反映及び区の認識についてです。
ロシアによるウクライナ侵攻や緊迫する中東情勢、円安などを要因として、食料品や燃料費など、様々な品目において、物価が高騰しています。
この影響は、東京都区部の「消費者物価指数」における8月の総合指数が、2020年を100として111.2、前年同月比2.6%上昇するとともに、こうした物価の高騰に賃金の上昇が追い付いていない状況にも表れ、区民生活に大きな影響を与えているものと考えられます。
本来、物価高騰などは、国が率先して対応すべきものですが、区は物価を価格に転嫁することが難しい事業所への支援など、区民の皆様と向き合う基礎自治体として、国や都の動向を十分考慮したうえで、区独自の物価高騰対策に取り組んでまいりました。
また、物価高騰は、区民生活ばかりでなく、工事費や物件費の上昇、工事案件の入札不調など、様々な形で区財政に影響を及ぼしており、インフレ局面においては、これまで以上に先を見通した対応が求められるものと認識しております。
次に、「都区財政調整交付金」の増減が区財政運営に与える影響についてです。
令和6年度の普通交付金は予算対比で、12億円減となりました。これは都市計画交付金対象事業を実施した翌年度から4年間にわたり分割で加算される額が、例外的に5年度に一括して加算されたことが要因です。
実際の歳入額が予算額を大きく下回る場合、基金残高が枯渇している状態などの最悪なケースでは、財源の確保ができずに、当初予定していた区民サービスが低下する恐れがあります。過去には、リーマンショックの影響を受けた平成21年度の補正予算において、特別区財政調整交付金など6つの款にわたり、減額補正を行った苦い経験があります。
このような事態に備えるため、本区では「財政調整基金」残高を標準財政規模の2割以上を確保することとしており、令和6年度決算においても、この目標を達成しております。
今後も、想定外の状況に柔軟に対応できるよう、「財政調整基金」の確保や財政の硬直化につながる義務的経費の膨張を抑制するなど、先を見据えた健全な財政運営に努めてまいります。
私からの答弁は以上でございます。
- 総務部長答弁
私からは、「well-being」なまちづくりに対するご質問のうち、まず、区における障害者の雇用率についてです。
本区の障害者雇用率は、令和6年6月は2.48%、令和7年6月は2.4%です。正規職員は令和3年度以降、毎年1名から2名を採用しており、直近5年間では、身体障害者を2名、精神障害者を6名、計8名を採用しております。
障害のある職員の実人員は、現時点で正規職員が42名で雇用率は2.46%、会計年度任用職員は18名で雇用率は2.20%、計60名です。正規職員の職種では、事務が多く35名、その他7名となっております。
次に、区の障害者雇用率が法定雇用率に到達していない理由についてです。
令和2年6月までは法定雇用率を達成しておりましたが、令和2年度から会計年度任用職員制度が導入され、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率の算定においても、会計年度任用職員が「常時雇用される労働者数」として雇用率の分母に加わることとなり、豊島区を含む多くの区で法定雇用率の維持が難しくなりました。本区では、計画的な採用の実施やオフィスサポートセンターを設置するなどの取り組みを行ってまいりましたが、現時点でもなお、法定雇用率が未達成であり、今後、全庁的な障害者雇用の推進を図るべく、体制強化を検討しております。
次に、「オフィスサポートセンター」の職員の働き方と仕事内容についてです。
令和5年にオフィスサポートセンターを設置し、障害者の採用を始めました。オフィスサポーターの定員は現在12名で、欠員が生じた段階で募集を行っており、応募者のほとんどが精神障害のあるかたです。
主な業務は、各課からの業務依頼により行う「印刷・折り」「データ入力」「封入封緘」などの作業です。
4人の障害者支援員がサポートしながら、仕事の正確性を重視して業務を進め、障害のある職員がやりがいや達成感を得られるような環境づくりにも取り組んでおります。
今後は、さらにインクルーシブな職場の実現をめざし、原則1年以上オフィスサポートセンターで勤務したオフィスサポーターを、年数名程度、各課へ配置していく方向で準備を進めているところです。
次に、「第一次豊島区困難女性支援基本計画」における「生活・就労に関する支援」の進捗と今後の取組予定についてです。
「第一次豊島区困難女性支援基本計画」の中で示されている「生活・就労に関する支援」については、福祉や健康・子育て支援を行うそれぞれの部署において相談を受け、関係機関や民間支援団体等と連携しながら、生活困窮、家庭問題、健康問題など様々な困りごとに対し、必要なサービスにつなぐ支援を進めております。
具体的な取組の一つに、「くらし・しごと相談支援センター」での相談支援があります。当該センターでは、ご指摘の、住まいの問題を含む生活の困りごとについて幅広く相談を受け、庁内外の相談機関より多くの相談者がつながり、支援を展開しています。
また、就労支援も実施しており、ハローワークなどの一般就労支援と異なり、その方の希望に沿った就労先を開拓し、マッチングを行うなど、いわゆる「オーダーメイドの就労支援」を行っております。令和7年4月から8月末までの39歳以下の若年女性における支援者数は11名となっており、そのうち3名が就労に繋がっております。
今後も引き続き、「くらし・しごと相談支援センター」をはじめ、関係部署において、関係機関や民間支援団体との連携を強化し、すずらん・ネット会議等を通じて民間支援団体のご意見も伺いながら、困難な問題を抱える女性がより利用しやすい相談体制の整備や、安定した生活を支える支援内容の充実に取り組んでまいります。
次に、すずらん・ネット会議の取組と方向性についてです。
すずらん・ネット会議は、区の関係部署や民間支援団体間が連携し、それぞれの強みを活かしたネットワーク構築と情報交換を目的として、令和5年10月に設置しました。現在、代表者会議を年1回、実務者会議を年2回開催しています。
代表者会議では、区の部課長や民間支援団体の代表者が参加し、若年女性支援に関する課題や今後の展望等について情報共有や意見交換を行っています。これに対し、実務者会議では、支援や相談業務の担当者が集い、民間支援団体の具体的な事例をもとに、区の各部署や民間支援団体における各々の役割や支援方法、制度について、検討・意見交換を行う場として機能しております。
このような場を定期的に持つことは、事例の共有に加え、区の各部署・民間支援団体が持つ様々な支援メニューの情報共有が促進されるとともに、個々の状況に応じたより効果的な支援方法の検討にもつながっており、大変有意義だと考ております。
今後もさらに、具体的な事例検討を重ね、支援方法の充実を図るとともに、新たな民間支援団体の参画も視野に入れ、困難な問題を抱える若年女性に寄り添った、きめ細やかな支援体制の強化を進めてまいります。
私からの答弁は以上でございます。
- 区民部長答弁
私からは、「well-being」なまちづくりに対するご質問のうち、地域住民がボランティアでなく働きながら地域コミュニティを創出できる仕組みの研究と検討についてです。
交流や居場所の創出など、地域コミュニティの活性化は新基本構想の柱であり、様々な施策を強化、展開しています。本区の地域コミュニティの拠点「区民ひろば」は、区内に26か所あり、住民による運営協議会やNPO法人が区の補助や委託を受けて運営されています。とりわけ、NPO法人運営の区民ひろばは、まさにボランティアではなく働きながら地域コミュニティの活性化を担っていただいています。
地域コミュニティの核である地域区民ひろば推進のため、
本年3月に「新区民ひろば構想」を策定し、コミュニティカフェによる現役世代の獲得や子どもの居場所はもとより、様々な世代間交流の場の創出を掲げ、今年度より事業をスタートしています。また、現在、区民ひろば併設の区民集会室を活用し、子育て世代が気軽に立ち寄り、つながれる環境整備を検討しております。
さらに、区民の地域活動を支援する区民活動補助金を、より一層地域コミュニティの活性化に利用されるよう、SNSなどを活用して周知するほか、地域活動交流センターによる相談、活動支援の充実を進めてまいります。
基礎自治体として、地域活動を支援し、地域コミュニティの活性化を進めることは、最も重要な課題と受け止めており、
世田谷区の「おでかけひろば」や他自治体の先行事例も参考にしながら、地域コミュニティを継続的に支える方策を研究してまいります。
私からの答弁は以上でございます。
- 福祉部長答弁
私からは、「well-being」なまちづくりに対するご質問のうち、まず、新たな子育てファミリー世帯家賃助成事業の申し込み件数と申込期間の設定についてです。
子育てファミリー世帯家賃助成事業は、子育てファミリー世帯に対して、家賃の一部を助成することにより、良質な賃貸住宅への誘導、居住環境の改善を図ることを目的としております。
新規申込件数の推移は、令和4年度42件、令和5年度41件、令和6年度19件で、減少傾向になっています。このことは、所得や家賃の上昇などから、助成要件である所得水準や家賃が上限を超えるため、制度を利用できない方が増加したことが要因として考えられます。
こうした状況から、令和7年度より所得基準の上限を月額268,000円から338,000円に、家賃額の上限を150,000円から170,000円に見直し、支援が必要な方が利用しやすいよう、制度改正を行ったところです。
令和7年度の募集にあたっては、期間を定め、申込を受け付けておりましたが、件数が7件であったため、現在、ホームページ等で随時募集を行っています。
今後は、支援が必要な方にしっかり届くよう、子育て関連の窓口での案内はもとより、SNSなどを積極的に活用し、周知に努めてまいります。
次に、区独自の家賃助成制度のさらなる拡充についてです。
現在、本区では、転宅費用助成として、今年の4月から新設された「多世代近居同居支援事業における転居費用助成」と「住居確保給付金の転居費用補助」があります。
多世代近居同居支援事業については、子育て世帯の豊島区内への定住化の促進を図ることなどを目的としており、親世帯が区内に引き続き1年以上居住していること等が対象になり、所得要件はありません。
また、生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金の転居費用補助については、世帯収入が著しく減少し、経済的に困窮した者に対し、転居費用を支給することで家計の改善に向けた支援を行うことを目的としており、世帯の収入が減少して2年以内の方が対象になります。所得要件は、世帯人数と家賃額で異なり、例えば2人世帯の場合、家賃額が64,000円であれば収入が月額194,000円以下の方が対象となります。
今後はこうした住宅に関する様々な支援制度を広く周知するとともに、丁寧な相談対応を行うことで、住宅支援につなげてまいります。
そのうえで、これらの転居費用助成制度に該当しない方には、その支援を行うための新たな制度の確立が必要となります。
子育てファミリー世帯向けの転宅費用の創設については、社会情勢や多世代近居同居支援事業および住居確保給付金の転居費用補助の活用状況を十分に踏まえ、その必要性を含め、慎重に検討してまいります。
次に、障害者雇用促進に向けた情報提供など民間事業者への波及効果についてです。
民間事業者の障害者雇用に対する指導や助言は、障害者雇用促進法において、公共職業安定所いわゆるハローワークの役割として位置付けられており、雇用率達成指導や、各種の情報提供が行われています。
区では、障害者本人や家族への相談支援、障害者雇用に関する普及啓発を行っています。その一環として、障害者雇用の機運を醸成するため、区オフィスサポートセンターで働く職員がいきいきと働く様子をPRするポスターを作成し、庁舎内での掲示だけでなく、中央図書館において関連図書の紹介と併せた展示を行っています。
さらに、「としま障害者就労フェア」において、区オフィスサポートセンターでの具体的な業務内容や支援の工夫、職員が感じているやりがいなどについての情報発信も行っています。
今後も、ハローワークと連携のうえ、それぞれの現場の強みを生かした支援や情報発信を行い、民間事業者の積極的な障害者雇用を促進してまいります。
次に、ハローワーク以外の障害者の生活・就労相談窓口についてです。
区では、障害のある方の就労や生活を支援するため、区役所4階に障害者就労支援センターを設置しています。センターでは、職場実習の機会の提供や、書類作成・面接練習、会社訪問、余暇活動の場の提供など、利用者のニーズに応じた様々な支援を行っています。
就労先の企業のあっせんについては、ハローワークが行っていますが、必要に応じて、ハローワークへの同行支援も行っています。
このような支援を通して、令和6年度には、センター利用者のうち、38名の方が新規の就職へとつながっています。
次に、障害者雇用に関するデータ収集と区内事業者への顕彰や指導等の必要性についてです。
民間事業者の障害者雇用に対する指導や助言は、障害者雇用促進法において、ハローワークの役割として位置付けられていることから、障害者雇用に関するデータの収集は、ハローワークがその権限に基づき行っています。法定雇用率を満たさない場合は、ハローワークが調査・指導や勧告、企業名公表といった措置を講じる仕組みとなっています。
区では、毎月実施されている「ハローワーク池袋管轄連携強化会議」などを通して、ハローワークを含めた関係機関と課題や情報の共有を図っています。
民間事業者に対する障害者雇用の促進にあたり、区が発注する建設工事における総合評価方式の評価基準では、雇用対策点として、「法定雇用率を超えて障害者を雇用した企業」を加点する仕組みとしており、これまでに加点の実績もあります。
さらに、障害者の多様な働き方の促進にあたっては、昨年度、サンシャインシティと連携し、新たな障害者雇用モデルの実証実験を行っています。今後は、このモデルをさらに複数の民間事業者に拡大し、雇用に関する実践的な情報を発信するとともに、優良な事例を顕彰する制度について、既に検討を始めています。
このような取組みを通して、障害者の多様な働き方を区全体へ波及させていきたいと考えています。
次に、精神障害のある方への対応等についてです。
まず、生活・就労実態の把握方法についてです。区では、生活・就労に関する相談対応や、障害者等実態・意向調査などを通じて、実態把握を行っています。さらに今年度は、障害者への支援のあり方を議論する「豊島区障害者地域支援協議会」において、精神障害の当事者やその家族を含めた意見の把握に努めています。
次に、就労相談窓口一本化やコーディネーター強化についてです。障害のある方に対する就労相談窓口は、障害者就労支援センターが担っているため、くらし・しごと相談支援センターなど他の就労相談窓口と一本化する考えはありませんが、引き続き利用者目線で課題や情報共有を行うとともに、新たな障害者雇用モデルの推進にあたり、それぞれの窓口の強みを生かした連携を図るなど、総合的な対応力の強化に努めてまいります。
次に、公共調達等を通じた障害者の就労機会拡大や作業所支援についてです。区では「障害者就労施設等からの物品等の調達の方針」を定め、毎年、全庁的な協力依頼を行っています。調達の際は、豊島区共同受注ネットワークをワンストップ窓口として案内し、区内の作業所に対する受注を促進しています。
次に、障害基礎年金停止者を含めた精神障害のある方への対応についてです。
障害基礎年金は、本人の病状が改善した場合や、就労等により一定額を超える所得があった場合は、停止となることがあります。このような影響を含めた困りごとに対し、区では、本人が何にお困りなのかを聞きとりながら、助言や相談先の案内などの支援を行っているところです。複合化した悩みを抱える区民を取り残すことなく、すみやかに適切な支援へとつなげていくため、これまで以上に当事者に寄り添った対応に努めてまいります。私からの答弁は以上でございます。
- 子ども家庭部長答弁
私からは、「well-being」なまちづくりに対するご質問のうち、空き家活用による若者の居場所事業の今後の予定と展開及び他エリアへの展開についてです。
本事業は、東池袋四・五丁目の不燃化推進特定整備地区において、UR都市機構が所有する遊休物件を区が直接使用貸借し、若者支援を行うNPO法人に転使用貸借する新たな取組みです。これにより、UR都市機構は遊休物件にかかる固定資産税と都市計画税の減免、維持管理費の軽減などのメリットが得られ、NPO法人も低コストで活動できるなど、win-winの事業展開が可能となるものです。
この取組みにより、UR都市機構から使用貸借を受けた2物件において、NPO法人サンカクシャによる若者の就労支援拠点「サンカクスクエア」と、NPO法人ピッコラーレによる若年妊産婦の生活支援拠点「マハロ」が、7月より運営を開始いたしました。
さらに現在、新たな物件についてUR都市機構から提示を受けております。この物件は建物規模が大きいことから、複数のNPO法人でシェアして活用する新たなスキームを考えております。令和8年度に改修工事を行い、夏頃の運営開始を目指しております。
今後も、このエリアのまちづくりの進捗に伴い、UR都市機構の所有物件が増えることが見込まれます。UR都市機構が現在所有する遊休地や新たに生じる物件につきましても、若者支援のための活用について積極的に協議してまいります。
また、この仕組みは他のエリアでも活用可能であり、7月に開催された豊島区産官学連携コンソーシアム「チームとしま」全体会においても、参画団体へ遊休物件の無償提供について呼びかけを行ったところです。
これからも、東池袋四・五丁目地区において本事業を着実に進め、実践で得られるノウハウを培うとともに、他のエリアへの展開を見据え、区内の遊休物件等の情報収集を行ってまいります。
私からの答弁は以上でございます。
- 都市整備部長答弁
私からは、「well-being」なまちづくりに対するご質問のうち、まず、居住実態に関する調査についてです。
先の予算特別委員会では神戸市の「タワーマンションと地域社会の関わりのあり方に関する有識者会議」の報告書について質問があり、タワーマンションの居住実態に関する調査の方法などについて研究していくとお答えしております。
現在、神戸市の採用した調査の手法や調査項目などに関して情報を収集しているところです。
なお、管理状況の届出によれば本区のタワーマンションの空室率は5%程度と神戸市と比較して少ない状況です。
次に、投機目的防止や空室抑制の仕組みなどについてです。
本区の再開発事業により現在建設中のマンションについては、事業者が自ら投機目的の防止や空室の抑制の仕組みやルールを検討し、5年間の転売禁止などの対応が行われているところです。
なお、区における今後のマンション建設を伴う再開発事業については、現在国が実施している居住実態の調査の結果を踏まえた対応策などを注視してまいります。
次に、補助金を活用した空き家活用にはどのような事業や実績があるのかについてです。
本区では、平成31年に空き家利活用事業を構築し、コミュニティカフェなどの地域貢献型施設とシェアハウスなどの共同居住型施設の整備を進めております。マッチングに関しては、事業開始からこれまで21件の空き家と11件の利活用事業者の登録を受け付け、今年度中の開設予定と区の補助要件に該当しないものを含め13件のマッチングが成立しております。
マッチング案件のうち、補助金を活用した施設の運営実績については、現在、地域貢献型施設としてコミュニティカフェが3件、若年妊婦施設が1件、障害者ミュージアムが1件、共同居住型施設として、高齢者及び障害者向けのシェアハウスが1件、ひとり親のシェアハウス2件があります。
また、その他補助対象とならない施設の運営実績については、ひとり親のシェアハウス1件、菓子工房1件があります。
次に、空き家活用の実績、先進事例、ニーズをホームページに掲載することについてです。
ホームページに関しては、住宅施策全般についてわかりにくい、必要な情報に行き着くのが困難であるなどの意見をいただいており、現在、住宅施策に関するホームページについて構成や表現の見直しを行っております。
なお、空き家の利活用事業に関しては、これまで空き家所有者の意向もあり、積極的に具体的な空き家の登録状況や利活用状況をホームページへ掲載することを控えてまいりましたが、今後、空き家所有者のご了承が得られた情報についてはホームページへ掲載してまいります。
次に、空き家活用事業でのニーズへの対応や方向性などについてです。
空き家利活用事業は、管理不全の空き家を発生させないことを目的に、多様なニーズに対応した利活用を進めております。
利活用にあたっては、空き家利活用事業者がどのような空き家をどのように活用していきたいのか、また、空き家を活用してほしい所有者がどのように活用してほしいのかを丁寧に聞き取りを行っております。そして現状のニーズに対応可能と判断したものをマッチングの対象とし、双方の懸念事項などを事前に区が調整し、双方が安心して協議できる場を設けて活用を図っております。
この手法により、他区と比べても多くの空き家活用が図られております。多様なニーズに対し、空き家の利活用だけで解決できるものではなく、利活用可能な空き家数も変動することから具体的な目標値を設定することは困難ですが、この取組を継続し、さらなる活用を図っていきたいと考えております。
以上をもちまして、塚田ひさこ議員のご質問に対する答弁を終わります。