介護保険料引き下げに関する反対討論
ただいま上程されました、●6陳情第2号「介護保険料の引き下げ及び在宅支援強化を求める陳情」継続審査となっていた「5陳情第26号、介護保険料の引き下げと制度充実を求める陳情」の、委員会審査不採択について、反対の立場から討論します。
これは、地域の大切な「社会資本である介護事業」が継続できる環境づくりをして欲しいという願いを込めて討論するものです。
陳情の要旨には、「訪問介護は、在宅支援の要です。報酬の引き上げこそ強く求められます」とありますが、本当にここにつきるわけです。しかしながら、この度の国の介護報酬改定においては、国は、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けたはたらきやすい職場づくり」を基本的な視点だとうたいつつ、訪問介護の基本報酬は、身体介護、生活援助、通院乗降解除とも、すべて基本報酬が下げられる現場からは、「ありえない」と悲鳴が上がる極めて厳しい改定となりました。これに関し、多くの当事者団体からは「撤回を求め、抗議する緊急声明」が出されています。
高齢者一人暮らしの割合が高い本区においても、訪問介護はまさになくてはならない存在です。住宅地の中にある小規模型の介護事業者が、地域の在宅介護を支えてきました。自転車で一軒一軒お宅を回っているヘルパーさんの姿を、以前はよく見たものです。しかしながら、全国的にも訪問介護はすでに15.3倍の有効求人倍率だという通り、地域の事業者に聞いても、求人を出してもまったく応募がない、介護ヘルパーの高齢化も進んでいる、ニーズはあるので事業を継続したいのだが、これでは撤退するしかないという声も聞いています。
(事実、昨年は全国でみても訪問介護事業所は、過去最高の倒産数でした。)
地域に根ざした介護型の訪問介護が減っていけば、どういうことになるか? 介護の社会化は、有名無実で、家族介護や介護離職をせざるを得ない。「可能な限り最後まで住み慣れた地域で」という地域包括ケアは、成り立つはずがありません。
陳情の願意にあるように、「国や都に対しての、負担金、補助金を根本的にと増やすように求める」は、もちろんですが、「訪問介護報酬を増額するため、豊島区として公費を投入うるなどの手立てを講じてください」については、委員会では「バランスが大事で今はできない」との消極的な声が多くでましたが、本気で取り組むよう、区議会からも強く要請をするべきです。
こうした危機的な介護従事者や事業所を取り巻く環境を改善すべき、東京都も介護職員・介護支援専門員居住支援特別手当事業を創設し、一人当たり最大で2万円の給付を支給すると発表がありました、これに加え、本区においてもさらに上乗せの給付を行うべきです。
訪問介護を行っている介護ヘルパー、ケアマネージャーさんも含め、本区の女性の割合の統計は持っていませんが、令和3年度介護労働実態調査「介護労働者の就業実態と就業意識調査」(公益財団法人 介護労働安定センター)によると、訪問介護は、77、7%が女性、その多くが非正規労働者となっています。他の業界全体の平均に比べても月にして6〜10万円ほど低いと言われています。
女性が担う、ケアワークの現場は、これまでも賃金が低すぎる問題があり、それが男女のジェンダーギャップ指数の差の根幹にもなっていたことを、受け止めるべきですし、今回の訪問介護の基本報酬引き下げのように、こうした男女の賃金格差を「公」が作り出していることが問題です。
今こそ、地域に必要な専門職のケアワーカーである、訪問介護ヘルパーの報酬をあげ、働く環境をちゃんと整備することを、自治体である豊島区が責任を持ってやるべきではないでしょうか。ずっと住み続けられる街、と言うのは、死ぬまで安心してくらせるまち。地域の中にケアの産業がしっかりあることです。
東京都の推計によると 2025 年には、都内で約 3 万 1,000 人の介護職員の不足が見込まれています。介護人材の育成も急務です。
大事に積み立ててきた財政調整基金を、こうした事業に使うことこそ、「高齢者にも安心して住み続けられ、地域で女性が生き生きと働く」ことを応援できることにもつながります。介護事業を地域の成長産業になりうる支援を求めます。
この陳情を採択し、豊島区が本気で、介護サービスの基盤の充実に取り組むべきです。
以上で私の反対討論を終わります。