第4回定例会:一般質問しました(2023年11月22日)

誰ひとり取り残さない、としまのまちづくりへ

と題し、

1)「公共」の役割としての働く環境の整備について、

2)その他は、「児童養護施設退所者などの支援事業」について

一般質問を行いました。

 帝国データバンクの発表によると、2023年9月の景気DIは、前月比の05ポイント減の2ヶ月連続で悪化。全ての業界において悪化しているという事態は、3年5ヶ月ぶりのことです。特に小売業界は深刻です。国内景気は、エネルギーのコスト負担増加や、物価上昇に賃金上昇が追いつかず、可処分所得が下がり続け、広範囲での業種、地域で下落傾向が続いている。と分析されています。先ごろ内閣府が発表した7月〜9月期の国内総生産(GDP)の、3期ぶりマイナス成長も同じ要因によるものです。

 賃金が実質で18ヶ月連続で減少という、異常な事態が続いています。個人消費が下がり、内需がしぼみ経済が停滞をしている、まさに悪循環。ここから抜け出すためには、「賃金アップがカギ」と誰もが口を揃えていう。まさにここが今の日本社会の喫緊の課題なのです。

 さて、今日のように社会問題が多様化していることで、行政需要が拡大し複雑化している中、責任をもって公共サービスを担う公務員は、心身ともに激務です。私自身も議会に入り、身近に職員のみなさまに接することになり、よりその思いは強まり、日々頭が下がる思いです。

 しかしながら、今の日本社会全体の賃金が低すぎることから、「市民感情によりそい、公務員の給料は削減すべき」などと言い、公務員の人件費を今以上にコストカットするべきとの向きもありますが、私はその立場には立ちません。正職員のみならずあらゆる公務セクターで働く人たちの賃金が適切に上がっていくことが、社会全体の賃金の底上げにもなると考えていますし、そうならなければなりません。

 また、公共調達によって地域の経済をまわしていく、という考え方は普通にあることです。例えば学校の給食食材を地元のお店から購入することなどです。行政が下支えする形で、行政組織で働く人的資源の賃金を担保することで、落ち込んでしまっている社会全体の賃金を底上げていく、推進力になることはできないか。と考えます。具体的には、区内において公務を担う人たちの公共セクターの賃金をあげる、ことによって、です。

 そこで公務を担う人の「給与」「賃金」について改めて質問をしていきます。

●公務員の給与の考え方

 任期の定めのない常勤の正規職員については、各地方公共団体の条例で定める給料表に基づき決定されています。この昇給の仕組みや、民間給与との較差を解消するための給料表の引上げについてお示しください。一方で、会計年度任用職員の給与やパートタイム職員の時給については、職種によってもばらつきがあるようですが、どのように決められているのでしょうか? そこには法的な定めがあるのか? についておたずねします。

責任ある公務を担い、住民に最善の行政サービスを提供するためには、「ひとりひとりが尊厳を持ち、働けるための環境整備」が必要で、そのため「正規公務員」の給与については、細かく給与体系が設定されているのだろうと考えます。

一方で、「会計年度任用職員」については、業種において差がみられるようです。専門性や資格によって給与に差があるのは理解できるところですが、「一般事務」職種は、令和4年度1,138円、令和5年度1,174円となっています。東京都の最低賃金が1,113円ですから、ほぼ同程度と考えられます。これで公務を担う「ひとりひとりが尊厳を持ち、働けるための環境整備」が守られているのだろうか、と疑問を持ちます。

今夏に官邸で開かれた「新しい資本主義実現会議」において岸田首相は、最低賃金の全国平均時給を2030年代半ばまでに1500円とする目標をようやく表明したとニュースになりました。この「最低賃金1500円」というのは、以前より労働組合やれいわ新選組、立憲民主党ら(野党政党)が「人間らしい生活のためには最低時給1500円が必要」と主張してきた数字です。私もせめてこのくらいは、必要ではないかと考えます。「会計年度任用職員」の給与を決める際に、時給1500円を一つの最低ラインにするという考えや、今後の目標があるのか、またこれまで議論がされてきたのかどうか? できないとしたらなぜ難しいのか? についてお答えください。

●公務員における男女の賃金格差について

「ひとりひとりが尊厳を持ち、働けるための環境整備」を考えた時に、男女の賃金格差の問題もあります。日本における男女間賃金格差は、他の先進国と比較すると依然として大きい状況にあります。こうした男女間賃金格差の現状を踏まえて、更なる縮小を図るため、令和4年7月に「女性活躍推進法」に関する制度改正がされ、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するともに、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対して、当該項目の公表が義務づけられました。

 今年度より内閣府令により、自治体にも「職員の給与の男女の差異の情報公表」が義務付けられました。本区の情報についてもすでにhp上にも公開されていますが「任期の定めのない常勤職員(正職員)」は、(男性の給与に対する女性の給与の割合は、90.4% 、「任期の定めのない常勤職員以外の職員(会計年度任用職員)」は、93.0%、全職員の平均は、83.8%となっています。

 事前に「令和4年度年齢別男女賃金差異」の一覧を資料請求しました。それによると、「正職員」の(男性の給与に対する女性の給与の割合)は、35歳〜47歳で、82%〜89%を推移と、全体の中においては、男女に差異がある年齢ゾーンとなっていました。

本区においては、あまり大きくないとはいえ「全職員の平均で、83.3%」「35歳〜47歳で、82%〜89%を推移」と差が生じているのはどのような理由があると分析をしていますか? 格差是正の必要性とその改善策についてもお示しください。

つづいて、公務セクター、豊島区の外郭団体でプロパーで働く人の、賃金の水準について、どのように担保されているかをお尋ねします。また公共サービスを担う外部委託について、本区は公契約条例はありませんが、それに準じたものはあるのでしょうか? お示しください。

私は「ひとりひとりが尊厳を持ち、働けるための環境整備」は、公務員でなくとも、公務を担う仕事に関しては、ある程度、区がチェックをし担保するべきと考えるため、お聞きしたものです。

次に

●高齢者の働く場の創出についてお聞きします。

 このところ、立て続けに悲鳴のような区民相談が寄せられています。

「障害年金でなんとかくらしていたが、パートナーが病気になり、その治療費がかさんで、生活が急激に苦しくなった。友人らにお金をかりてなんとかしのいできたが、もう限界だ」

「親戚の介護をやっていたが、保険ではまかないきれない介護サービス料金が大変で、貯金もなくなりこちらの生活が大変になった。そんな矢先に介護をしていたおばさんが亡くなってしまい、葬儀代が高くて、お葬式を出すこともできず途方にくれている」

いずれも70歳以上の区民からの訴えと相談でした。

 人々のくらしの最前線にたつ自治体としては、とにかく目の前の人を救わなくてはなりません。私もこうした相談を受けるたびに「くらし・しごとセンター」の相談窓口につなぎ、生活保護の支援につなぎ、ということをしていますが、ここに至るまでに、なんとかならなかったのか・・・との思いになります。

 これまでコツコツと真面目に働いてきた方々が、失業、病気や事故など、ほんの少しのアクシデントがきっかけで、転がり落ちるように生活がいっきに立ち行かなくなる。本来だったら少しはゆったりと暮らせることを描いていただろう人生の先輩たちが、「みじめだ」と涙をながしお話しになる姿には、人生の終盤期に、尊厳を奪い苦しい生活を強いるこの国の社会保障制度はいったいどうなっているのかと、悲しさと怒りが湧いてきます。

 公的年金制度は、先細るばかりです。老齢厚生年金の平均受給月額は65歳以上男性で約16万9000円、女性で約10万9000円。年金の男女格差は、月に約6万円です。さらに国民年金の場合はきびしく、平均は56,368円。男性の平均年金月額は59,013円、女性は54,346円となっています。

「住宅・土地統計調査」によれば、1か月あたりの家賃平均が、東京は81,001円となっており、この調査を前提とすると、年金はほぼ家賃支払いに充てられ、必要な生活費が捻出できないことになります。持ち家がない高齢単身女性の年金生活は、実に厳しいことがわかります。

 また次のようなデータがあります。

「令和4年高年齢労働者の労働災害発生状況」(厚生労働省労働基準局)
によると、全年齢に占める60歳以上に占める高齢労働者は、全雇用者の18.4%、労働災害による休日4日以上の死傷者に占める、60歳以上の高齢者の割合は28.7%にのぼります。平成14年から令和4年までの推移をみると、高齢者の割合は右肩あがりに増えています。

60歳以上の男女別の労働災害発生率は、30代と比較すると男性は約2倍、女性は約4倍です。高齢女性の転倒災害発生率はとりわけ多く、60代は20代の約15倍になっており、男性に比べ、圧倒的に大きな数字になっています。

 私は、老化という自然現象に逆らって高齢者がいつまでも、現役さながらに働くべきである、とは思ってはいません。しかしながら、これまで言及してきた現状からも、働かないと生きていけない方々が大勢いるのです。ならば、くらしと命を守るべき自治体が、高齢者が安心安全に働ける環境を用意することは、これから必要なのではないかと考えます。そこで質問をします。

 高齢者のくらしが厳しく、特に高齢女性が安心安全に働く場所の確保が必要です。国も多様な就業、社会参加の促進として、臨時的・短期的ではあるが、公益社団法人でもある「シルバー人材センター」の活用を促しているようだが、本区においても、ここをもっと活用すべきではないでしょうか? 

 その「シルバー人材センター」が発行する「最新のお仕事情報」を見ると、このところの人手不足もあり、求人件数はかなりあります。しかし、いずれも時給が安く、最賃程度かそれ以下なので、なかなかマッチングができていない状況です。

 公務で人手不足のところ、スキップや学童の補助など、もしくは人生の経験を積んだ高齢者にふさわしい新たな公共の仕事を創出し、シルバー人材センターに発注をすることも必要ではないか。その際、高齢者のくらしを豊かにするためにも、1300円〜1500円の時給で考えることはできないか?と考えますがいかがでしょうか。

「シルバー人材センター」は、現在の会員数は、男女比が2:1ですが、女性の会員拡大や女性会員の就業先の拡大を図るため、「ミモザ委員会」という会を立ち上げ、エポックとも連携していきたいそうです。今後、例えば、若年女性支援の「すずらんスマイルプロジェクト」などとも連動をし、生きづらさをかかえている若年女性、ヤングケアラーの家庭への家事支援、など、ケアワークの経験が豊富な高齢女性だからこそ、そのスキルが活かせる「公務」もあるのではないかと考えるがどうでしょうか?

「シルバー人材センター」は、かつてはリタイアした方が、地域で貢献するためにつくられた高齢者のための「人材センター」でした。しかし時代がかわり、ニーズも変わってきています。豊島区シルバー人材センターが行ったアンケートによると、「入会理由」の64歳〜74歳までは、理由の1位が「収入を得たい」です。75歳〜79歳でも約5割の人が「収入を得たい」となっています。

 しかしながら、豊島区シルバー人材センターの「入会案内」の注意書きには、

「センターの働き方は「生きがいの充実を得るための任意的就業」を目的としているため、生計の維持や生活の保障を目的とした本格的な就業ではありません。また入会後すぐに就業できるとは限りません」と、明記されています。

この注意書きの法的根拠はあるのでしょうか?

法的な縛りがあるとしたら、高齢者の生活を守るためには、新たな公的な人材派遣センターを作る必要性もあるのではないか、そういう時代に入ってきたのではと考えます。法的根拠がないのであれば、運用と目的変更によって、シルバー人材センターの枠組みを利用して、年金では足りない「生活費」を得るための、仕事の紹介ができるような事業拡大も考えられると思うのですが、本区としてはこの点をどう考えますか? 

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「公共」の役割としての働く環境の整備について、さまざま質問をしてきました。

 人々の命とくらしを守り、尊厳を持って人間らしく社会の営みを続けていくために、公が仕事をつくりだし、公共サービスの一旦を、地域で担ってもらうことは、これからの人手不足時代、超高齢化時代、を考えた時に一つの対応策になるのではないでしょうか。増え続ける行政サービスの一端を、A Iやロボットではなく、もっと地域の「人」に担ってもらう。そこにはしかるべき対価をちゃんと支払う、という発想があるべきです。

 地域の人が、地域で公共に関連する仕事を行い、地域でくらす人の賃金が上がることで、地域でお金を使い、地域経済をまわす好循環を生み出すことに寄与できるはずです。公務の一旦を担うことで、地域に貢献しているという、よろこびや自己肯定感も高まるかもしれません。

 区長は就任当初より「“ひと”が主役」の区政運営が基本姿勢であるとし、今定例会の招集挨拶でも、強調されました。その方針にはおおいに賛同するところです。まさに“ひと”が主役というのは、誰もが尊厳を持ち、「働き続けられる環境が地域にある」ことでもあります。

 それはSDGsの理念「だれひとり取り残さないまち」「持続可能な社会をつくる」とも合致していると考えます。1年前倒しにして策定する今後の豊島区基本構想・基本計画にもそうした視点を入れていただきたいと要望し、このテーマの質問は終わります。

最後に「その他」として、

「児童養護施設退所者など支援事業」についてお聞きします。

 昨年第3回定例会の私の一般質問、「教育格差の是正」において、児童相談所の一時保護を経て児童養護施設や里親の下で暮らした若者に対しては、区が独自に給付型の奨学金を出すなどをし支援をするべきではないか、と質問しました。その時は予定はない、との答弁で落胆しましたが、今回、事業が実現しとても良かったと評価します。新規で区の独自支援を行うことになった経緯と一番の大きな理由は何でしょうか?

 またこの取り組みは、恒久的な事業としてやるべきものです。私は、国が大学までの学費を無料化をするべきと考える立場ですが、現在では本区に安定した財源が必要となります。基金を活用していますが、安定的な財源確保のためには、この先どのような取り組みを予定しているのか? お聞きします。

以上で、一般質問を終わります。ご静聴ありがとうございました。