【「国による不当な生存権の侵害は許さない」生活保護基準額の引き下げは、私たちの生活にも関係している

陳情1)審査をしました。

 生活保護の基準額引き下げ違憲訴訟、いわゆる「いのちのとりで訴訟」が、2014年から各地で行われてきましたが、今年6月に最高裁が引き下げは違法だとする判決を出し「画期的判決」と大きなニュースとなりました。第3回定例会の陳情に、「生活保護基準引き下げ違憲訴訟の最高裁判決を踏まえた速やかな対応について意見書提出を求める陳情」が出されました。「国が謝罪もせず、侵害された不利益を回復するための具体的な救済策を示さない」中で、豊島区議会が「不当な生存権の侵害は許さない」という姿勢を明確にすることは、区民の尊厳と信頼を守るための重要な意思表示になると、私は考えます。

また生活保護基準額は、国の生存権保障の水準、いわゆる「ナショナル・ミニマム」であり、最低賃金、就学援助、医療、介護など多くの制度と連動しています。「土台が沈めば、みんなが沈む」。すなわち私たちの生活にもダイレクトに関係してくることなのです。

司法が示した判断を、今度は政治が実現に移す責任があります。国が動かないのなら、もっとも身近に命と暮らしを守る地方議会から、声をあげるべきです。その考えから私たちの会派は「ただちに採択すべき」との立場で、「討論」にも立ちましたが、賛成少数により不採択となりました。(立憲・れいわ、立憲民主、共産党が採択、公明党、都民ファ・国民、自民党、維新・無所属、無所属元気の会が不採択)他の議会では全会一致で「採択」となったところもあるのに、残念なことです。引き続き、生活保護基準額に関しては注目をしていきます。

反対討論全文)

反対討論原稿(7陳情第25号)

「立憲・れいわ・市民の会」の塚田ひさこです。

私は、7陳情第25号「生活保護基準引き下げ違憲訴訟の最高裁判決を踏まえた速やかな対応について意見書提出を求める陳情」について、委員会での不採択の結果に反対し、ただちに採択すべきとの立場から討論いたします。

本陳情の件名にある「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」とは、第二次安倍政権下の2013年から2015年にかけ、段階的に生活保護基準額を平均6.5%、最大10%引き下げたのは生活保護法に違反するとして、生活保護の利用者らが減額の取り消しなどを求めて訴えたもので通称「いのちのとりで裁判」です。こうした提訴は2014年から2018年にかけて29都道府県の地裁で行われ、原告の数は計1000人を超えました。うち、2023年4月の大阪高裁(原告敗訴)と2023年11月の名古屋高裁(原告勝訴)で判断が分かれておりましたが、6月27日に最高裁は、引き下げを「違法」とする判決を言い渡し、これにより原告の勝訴が確定しています。その最高裁判決を踏まえ、速やかな対応についての意見書の提出を国に求めているのが、本陳情の願意であります。

最高裁判決によると、引き下げの根拠とされた「デフレ調整」は、下落率が増幅される「物価偽造」ともよばれる独自の物価指数を用いており、こうした厚生労働相の判断の過程および手続きに「過誤」「欠陥」があり、裁量権の逸脱として「違法」と認められたものです。にもかかわらず、6月の判決から4か月を経ても、厚労も関わった政治家も、誰一人として謝罪をしていないことには驚くばかりです。

例えば、障害などを理由に強制不妊手術をされた人たちへの賠償を求めた優生保護法裁判の場合、原告勝訴の判決が出た翌日には「大臣が謝罪したい」と連絡があり、当時の岸田総理の謝罪日程もすぐに決まったと聞きます。生活保護法だけでなく、憲法25条が保障する生存権にも関わるこの重大な違法行為に対して沈黙を続ける現状は、到底許されません。今も、実質的な違法状態が続いているということです。

厚労省は昨日、10月23日にも、「第6回 生活保護基準部会 最高裁判決に対応する専門委員会」を開催しており、そのオンライン傍聴も私はしましたが、被害回復や謝罪の方向ではなく、基準改定の“検討”にとどまっていることことも問題です。つまり、最高裁が違法と認めた基準が、いまだに現行として運用されているのです。その間にも、原告のお一人が新たに亡くなられました。10年を超える訴訟を闘い抜いた方々が、救済を待ちながら亡くなっていく現実――これは、もはや「判決後の怠慢」ではなく、国家による新たな人権侵害です。

 この12年間、生活保護基準の引き下げは、区民の生保受給者の生活にも直接的な痛みをもたらしています。加えてこのところの物価高騰は、もっとも困窮している方たちのくらしと命を直撃しています。「エアコンはあっても、電気代の支払いがこわくてつけられない。日中は区の施設で過ごすが、夜の寝苦しさがこたえる」「食べ物の値上がりが大きく、いつもお腹が減っている。」さらに、住宅も深刻です。「区内で5万3,700円以内で借りられる部屋はほとんどない。その差額や管理費は生活扶助費から出すしかなく、ますます食費や光熱費が削られていく。」健康で文化的な生活とは、ほど遠い現実があります。

 こうした声に日々向き合っているのが、私たち自治体議員です。全国の地方議会では、同趣旨の陳情が出され、採択されてもいます。

大阪市議会では、全会派一致で「最高裁判決に基づき全ての生活保護利用者に対する速やかな被害回復措置を求める意見書」を可決しました。意見書では、国の責任で遡及支給や被害回復を行うこと、生活扶助基準と連動する制度の影響調査、そして違法改定の検証を求めています。また、町田市議会でも「速やかな生活保護費減額分の支給及び利用者への謝罪を求める意見書」が可決されました。町田市の意見書は、厚労省が社会保障審議会にも諮らずに「デフレ調整」と称して実施した手続きの違法性を厳しく指摘し、判決から2か月経っても返還も謝罪もない厚労省の怠慢を批判。原告の2割を超える232名が判決前に亡くなった事実を踏まえ、被害回復を「緊急を要する課題」として明記しています。

 そうした地方議会の動きが広がりつつある中で、本区委員会の質疑を議事録で確認をしましたが、「国の動向を見守る」とする会派が多数で、結果不採択となったことは、きわめて残念です。もっとも身近に、苦しい区民の声を聞いているはずなのに、なぜなのか。区内の困窮者支援団体さんにこの結果を話すと「最高裁判決も出ているのに、なぜ・・・」と絶句されていました。

国が謝罪もせず、侵害された不利益を回復するための具体的な救済策や今度のも示さない中で、豊島区議会が「不当な生存権の侵害は許されない」という姿勢を明確にすることは、区民の尊厳と信頼を守るための重要な意思表示です。

生活保護基準は、最低賃金、就学援助、医療、介護など47の制度と連動しています。「土台が沈めば、みんなが沈む」――この裁判を支えた言葉の通りです。最高裁が示した統一判断は、政治が実現に移す責任があります。国が動かないのなら、もっとも身近に、命と暮らしを守る、自治体から、地方議会から声をあげるべきです。

よって、我が会派は本陳情をただちに採択すべきとの立場から、委員会の不採択の結果に反対いたします。

以上で反対討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。